調査報告書を読んで 内閣府障害者政策委員会委員長 石川 准 DPI女性障害者ネットワークが実施した「障害のある女性の生きにくさに関する調査」は、一人一人の障害女性が経験してきた困難と、精一杯生きてきた事実と、それぞれの語り尽くせない思いを言葉にするとともに、支援制度の枠組みや現状を明らかにすることで、この社会に暮らし、この社会の在り方に責任を負うべきすべての人々に問いかけている。あなたは読んでくれましたか、あなたは仲間ですか、これから何を引き受けてくれますか、と。 本報告を読めば、障害女性の複合的生きにくさは、加算的でなく相乗的に働いていることが誰にでもわかる。本報告には悲しみと苦痛、鬱積と怒りがあふれている。そうしたものと無縁な人生などどこにもないのだから―というのは気休めだ。希望や喜び、楽しみに恵まれた人生と悲しみや苦痛の多い人生は、厳然としてあることを今更ながら痛感する。 そうした不平等に社会は責任がないと考えるか、社会がそうした不平等を作り出しているとみるかで、社会はいつも割れてきた。また後者の立場でも、そうした社会を作ってきた責任は自分以外の誰かにあると考えるか、自分にもあると考えるかでも人々は感覚を異にする。 障害者政策委員会は昨年12月に新障害者基本計画への意見具申をまとめたが、委員会は意見具申が基本計画に少しでも多く盛り込まれるよう新内閣に働きかけていく責任がある。 障害者政策委員会は多様な障害当事者が参画する新しい審議会だ。他者の経験と見識に耳を傾け(目を見張り)、建設的な対話、熟議により合意をめざすインクルーシブな社会の試金石のような場でもある。 委員会では女性委員の多くから障害女性の複合的困難について発言があった。本報告書が多くの委員を励ましていたのだと思う。 改めて報告書を読み、多様な人々が本音で語る、ジェンダーとセクシュアリティと障害に関するしゃべり場は、さぞや大きなパンドラの箱を開けることになると感じた。