〜DV基本計画策定に障害女性の声を〜 NPO法人女性と子ども支援センター ウィメンズネット・こうべ 正井 禮子  最初に、複合差別実態調査において、ご自身のこれまでの体験やいきづらさを率直に書かれた多くの女性たちの勇気に深い敬意を表したい。  私は阪神淡路大震災を契機に、DV被害女性の支援に取り組み、女性と子どものためのシェルターを運営している。シェルターを利用した女性の中には、高齢者や10代の女性、外国籍の女性もおられたが、障害女性は一人もおられない。これまでDV基本計画の策定に関わったり、民間団体として行政に提言もしたが、障害女性のためのDV施策を考えてこなかった、いや、そのことに気づかなかったというのが正直なところである。当団体にも、障害女性からのDV相談は稀である。男性の介助者から性被害を受けているという相談は数件あった。いずれも家族に訴えても相手にしてもらえないとのこと。報告書を読み、暴力被害の深刻さと同時に、障害女性が声をあげることの困難や、支援情報が届きにくいことを想像してこなかったことを心から申し訳ないと思った。DVや性暴力についての基本的な知識さえ十分に提供されていないのではないだろうか。男性が稼ぎ、女性は家事・育児を担うという性別役割意識はいまだに根強いが、障害女性の多くが就労から切り離され、一般女性以上に女性役割に縛られて苦しんでいる。私は60代だが、学校時代は障害のある人がクラスにいないため、友人もいなかった。東日本大震災以降、ぽつぽつと女性障害者の方たちとも出会うようになった。調査から「ありのままの自分を受け入れてほしい、当たり前の人生を歩みたい」という彼女たちの思いを、社会の無理解や偏見がどれほど深く傷つけているかを改めて知った。  兵庫県では今年がDV基本計画の見直しの年である。繋がりの出来た県内の障害女性たちにも呼びかけて一緒に政策提言しようと思う。障害があってもなくても、結婚してもしなくても、女性が精神的・経済的に自立できる社会、性差に捉われることなく男女が対等であり、女性の人権や尊厳が守られる社会の実現に向けて共に歩みたい。