調査報告書を読んで メインストリーム協会 事務局長 佐藤 聡  報告書の中で、視覚障害の女性が次のように語っていた。  『「そういうことは知りませんでした」じゃ許されないって、「知らなかったんじゃなくて、見なかったでしょ、聞かなかったんでしょ」』  ここを読んだとき、ドキッとした。自分は複合差別については、DPI女性障害者ネットワークの取り組みを知ってはいたが、どのような差別の実態があるのかは正直良く知らなかった。それは、知らなかったのではなく、僕自身が見てこなかったからであり、聞こうとしてこなかったからなんだな。  この報告書には、複合差別の実態が語られていた。なぜ、複合差別というのかも読んだらよくわかった。一方、都道府県の男女共同参加計画とDV防止計画では、複合差別のことはほとんど取り上げられていないことも報告されている。まずは実態を知ること。ぜひ、みなさんにも読んで頂きたい。 JNNC代表世話人・公人による性差別をなくす会 永井よし子  差別的状況や言動によって、傷つき、悩み、生きにくさを感じる人々がいることは知らされなければならない。指摘することによって、差別の実態が差別と認識されることを私たちは経験的に知っている。それが個人としての差別解消と同時に、差別に敏感な環境を作り上げていくことにつながる。女性差別もDVも、気づきと指摘が差別としての認知になった。その意味でも、この調査書の意義は大きい。さらに当事者の率直な回答、共感的受け止め、冷静な分析と問題点の抽出が本調査を画期的なものにしている。  調査編を読みながら、私は何度も何度も立ち止った。一人一人の体験の背景と心情、その悲しみや怒り、差別を招く構造と慣習に自分らしく生きることを阻まれる苦しみを思った。そしてBチームの綿密な調査が浮き彫りにした日本の政府や政治、省庁や自治体の表面的な政策の体質を苦い思いで噛みしめた。  20年も前のことだが、私は地方議員として幼稚園や小学校で障害のない子どもと一緒に教育や保育を受けたいと望む障害を持つ子やその親の希望を叶えるために努力したことがある。統合教育を建前とする教育委員会は、何組かの親子の希望を受け入れたが、本音は「施策の充実が障害児の受け入れ増加になっては困る」というものだった。  今、私は、女性差別撤廃条約を実質的に日本の政治や社会に定着させるために運動しているJNNC(日本女性差別撤廃条約NGOネットワーク)にも参加しているが、批准から28年、いまだに差別を容認する日本社会の固定観念は払拭されない。世界が差別を禁止し、撤廃に向けて払う真摯な努力と意義を、日本政府や政治家、司法の世界が理解しないことが最大の壁になっていることを痛切に感じている。