調査報告書を読んで 「想定外」を生み出さない取り組みを 働く女性の全国センター 伊藤みどり  調査報告書にまとめられた回答の中で、性暴力、性差別にあたる1?4の項目の回答は、「女性」としての差別の現状であり健常者の女性とも共通体験だった。その上に、5項以降は、障害を理由にした差別が重なることで、より生き難い現実が見えてきた。障害を理由にした差別は、健常者が気づかない内容が多くあった。私は、あるNGOのワークショップで、視覚障害の方が、ある女性団体の集会に参加しようとした時「想定外」と断られたという体験を聞いた。おそらく、その女性団体の方は、差別するという意識に気が付いていなかったのだと思った。  かつて、女性政策は福祉政策の一つで、労働問題として把握されておらず、女性差別は「想定外」という認識だった。ようやく女性が想定内になると今度は「パートや派遣」が「想定外」になった。日本では、1985年に男女雇用機会均等法が成立し雇用の現場に女性たちも働く機会が拡大した。しかし、現実は、雇用機会の均等と引き換えに過労死の男女共同参画ともいえる男並みの競争主義、能力主義に女性たちも巻き込まれた。女性たちの間での格差が拡大し一部の女性たちの成功物語の陰で多くの女性たちが貧困化した。企業は、能力主義で女性たちを分断してきたのだ。  今日、障害者運動の長年の蓄積が、日本でも障害者差別解消法という形で実現した。合理的配慮義務の概念も、初めて企業に課せられることになっていきそうだ。  今、働く女性の権利の運動をしてきた私は、機会の均等だけでは女性の自由を勝ち取れないことを痛感している。  今こそ、障害者運動と「女性」労働者の差別解消の運動は、同じ社会の障壁に対して連帯して取り組む必要を感じた。  「女性」であること「障害者」であることを共通課題として、差別されてきたものが、さらに一人の「想定外」も生み出さないことを意識して一緒に学んで現実の変革を共同していきたいと思った。