障がいのある子どもの安心・自信・自由を保障していくために ―複合差別実態調査報告書を読んで― NPO法人CAPセンター・JAPAN 障がいのある子どもへのCAPチーム 西村 説子  私がこの15年取り組んでいるCAP(Child Assault Prevention)とは、子どもの人権が尊重され、子どもへの暴力のない社会をめざし、まずおとなにプログラムを提供することが特徴で、子ども自身だけでなく、社会(環境)に働きかける参加体験型のプログラムです。1960〜70年代におきたフェミニズム運動から、人権侵害をされてきた女性たちが自分に起きた暴力を語り、女性差別が明らかになりました。その女性達は子どもの頃から起きていた暴力をも明らかにしていきました。その中で分かったことは、女性が暴力を受けやすい要因と子どもが暴力を受けやすい要因は同じであり、子どもへの暴力は女性への暴力同様、社会構造の中で起きている人権侵害だということです。また、子どもへの暴力は子どもの発達を阻害するものでもあります。それゆえ、子どもへの暴力をなくしたいと思い日々活動しています。  私たちはすべての子どもの人権が尊重されることを願っていますが、障がいのある子どもたちへのプログラム実施はなかなか進んでいないのが現状です。障がいのある子どもたちの方がより暴力に対して脆弱な状況・立場に置かれているにもかかわらず。  この報告書を読み、75名の回答者227項目のうち、明らかに子ども時代のことと思われるものが30項目に及んでいます。「学校でトイレの介助が男の先生でいやだった」、「同級生から触られた」、「きょうだいからレイプされた」など、身近な人からの人権侵害がいくつも挙げられています。さらに、そのことを聞いてもらえない、信じてもらえない、改善してもらえない状況にあったこともこのアンケートでわかります。子どもの声をなかったものにしてきた社会が見えてきます。このアンケート以外でも、子どもであり、女性であり、障がいがあることで何重もの人権侵害にあわれてきた方がもっと大勢いらっしゃるのだということも容易に想像できます。  自分が今されていることが人権侵害行為かどうか判断がつきにくいことがあります。そんな時に、どうぞ「この人といて安心か? 自信があるか? 自由に自分の行動が選べる状況であるか?」とご自身に問うてみてください。CAPでは、この「安心・自信・自由の権利」を、人権侵害かどうか(暴力かどうか)に当事者が気づくための心のセンサーとして、伝えています。  先日、都内の中学校の特別支援学級でCAPプログラムを実施しました。実施前、先生方は子ども達がどれだけ問いかけに対応でき、参加できるのか疑心暗鬼でありました。しかし終了後先生から、「あんなに答えられると思わなかった」「思った以上に子ども達が理解していたのでびっくりしました」「あの後、安心・自信・自由はあるのかな?と使ってみました」とうれしい声が寄せられました。子どもたちはたくさんの力、そして可能性を持っています。  この調査書を読み、障がいのある子どもの力を信じ、声に耳を傾けるおとなの必要性を改めて感じ、プログラムの普及に早急に努めなければと誓いを新たにしました。