「障害のある女性の生活の困難―複合差別 実態調査 報告書」を読んで 特定非営利活動法人イコールネット仙台 代表理事 宗片 恵美子  調査報告書を読み、障害を持つ女性に対する人権侵害が日常化している現状に憤りを感じるとともに、女性への差別的状況が今なお根強くある日本社会では、障害の有無にかかわらず、女性一人ひとりの現実に重なるものであることを感じました。  こうした状況は、災害など非日常の状態が発生すると、より一層深刻なものとなります。私たちの団体は、東日本大震災発生直後から、避難所や仮設住宅において、一貫して被災女性の支援活動に取り組んできました。障害のある方はもちろん、高齢者、若年女性、妊産婦、シングルマザーなど、多くの女性たちが、様々な困難を抱え、「非常時」という理由で、我慢を強いられました。避難所でのセクハラや暴力、震災同居や家族介護によるストレス・体調不良、そして失業・退職・転職等々、身を縮めながら過ごす時間は、女性たちにとって苦痛以外の何ものでもありませんでした。  障害を持ち、車いすでひとり暮らしをしている友人は、障害者用トイレも無く、暖房も不十分な避難所で車いすのまま過ごし、ついに体調を崩し、救急車で搬送されたといいます。団体が行なった聞き取り調査では、障害のある女性たちから「褥瘡ができるので、避難所には行けなかった」「福祉避難所に入りたくても基準が厳しく受け入れてもらえなかった」などの声が寄せられました。結果、「災害時でも、人の世話にならないように、自分のことは自分で決めておくしかない」という悲痛な声も聞かれました。支援を必要とする人々に支援が届かない現実は、私たちに突きつけられた課題でもあります。障害のある人々が避難所や仮設住宅から出ていかざるを得ないという状況を生み出している社会のありようを災害時のみの問題としてではなく、日常の問題として、深刻に受け止めなければならないと考えています。  私は、女性の人権と性をテーマに活動するグループにも籍を置いており、2004年、「優生思想を問うネットワーク」代表の矢野恵子さんの講演会を企画し、映画「忘れてほしゅうない―隠されてきた強制不妊手術」の上映も行いました。「結婚もできない」「子どもも産めない」現実……。障害者がいて当たり前の社会をどう築いていったらいいのか。深く考えさせられる機会となりました。  障害を持つ女性たちの生きにくさは、私たち一人ひとりの生きにくさにほかなりません。解決に向けた取り組みをともにすすめていかなければと強く感じているところです。