私たちぬきに私たちのことを決めないで! 障害のある女性の複合差別は今 DPI女性障害者ネットワーク dwnj@dpi-japan.org http://dpiwomennet.choumusubi.com/ 写真: 会議場面 書影: 「障害のある女性の生活の困難−複合差別実態調査報告書」2012年発行 第四刷頒布中 ■DPI女性障害者ネットワークとは ・「DPI女性障害者ネットワーク」は、国内の障害女性をつなぐ、ゆるやかなネットワーク組織です。 ・障害女性の自立促進と優生保護法の撤廃を目指して、1986年に発足しました。 ・優生保護法が優生条項を削除し、母体保護法となった1996年以降、一時活動を休止していましたが、2007年のDPI世界会議韓国大会で、障害女性の世界的連帯が求められたことをきっかけに、活動を再開しました。 ・現在は、障害女性に関する法律や制度、施策のあり方をめぐる国内外の様々な課題に取り組み、情報発信をしています。 ■障害のある女性の生活の困難とは 複合差別実態調査 ・私たちは2011年に、障害女性へのアンケートと聞き取りによる「障害のある女性の生きにくさに関する調査」を行いました。 ・障害があり女性であることで社会で抱えざるをえない複合的な困難について、公的な調査は乏しく、焦点もあてられていない中で、自らの手で生の現実を数多く蓄積し、問題の重要性を周知しようと呼びかけました。 ・全国から87人の協力が得られ、問題別に整理すると262件の声になりました。一部をこのリーフレットにも掲載しています。 ・上と同時に、全都道府県のDV防止計画等の障害女性に関する記述状況もチェックしました。調査結果は「障害のある女性の生活の困難−複合差別実態調査報告書」にあります。 写真とメッセージ: 1:女性×障害 自分らしくありのままにいきる社会にしたい★ 五位渕真美(脳性まひ) 2:障害者問題にこそ、“ジェンダー統計”の活用を! 吉田仁美(聴覚障害) 3:ジュネーブから変える日本の施策 そしてつながる、世界の障害女性 佐々木貞子 (視覚障害) 4:私が輝く!みんなが輝く! 私たちが行くことに意義がある! 藤原久美子(視覚障害・1型糖尿病) 1 私たちぬきに私たちのことを決めないで。 「私は女性であり、言語障害を伴う障害者です。そんな私に『あなたはどう生活したいのか?』と聞いてくれる人はいませんでした。でも私は自分の人生を生きることをあきらめない。」 ・障害者政策を話し合う委員会*に、2名しか障害女性がいません。女性政策を話し合う委員会には障害者がいません。 ・障害女性の意見を政策に反映させるために、障害女性の社会参画は大きな課題です。私たち抜きに私たちのことを決めないで。 *内閣府障害者政策委員会 ・・・・・ 障害者権利条約は、障害に基づくあらゆる形態の差別を禁止しており、これには合理的配慮を行わないことを含みます。ある視覚障害女性は分娩入院拒否という差別を受けました。転院した病院は、不便なことを本人に聞き、トイレに近い部屋にする、歩きやすいよう廊下にものを置かない、食事のときに看護師が食器の位置や料理内容を説明するなどの合理的配慮を提供しました。障害者権利条約の趣旨内容が、社会のあらゆる分野で理解されることが、複合差別の解消に不可欠です。 2 障害者ジェンダー統計、雇用就労 ・政府の調査統計は、障害別や障害の程度には着眼していますが、多くの場合、障害者の性別による差異については視野の外に置き続けています。 ・特に、障害者雇用促進法に基づいて国・地方公共団体・企業が毎年提出するフォーマットには、性別回答欄もないために、カウントされている約42万人の障害者のなかの女性の状況を示す基礎データさえありません。 ・雇用、教育、健康、暴力などすべての領域について、ジェンダー統計を整備し、実態を可視化し、適切な措置をとることが不可欠です。 声 ・ある企業の面接で、 「うちは本当なら障害者は要らないんだよ。まだ男性で見た目に分からん障害者やったらエエねんけどな〜。」と言われた。  (30歳代 肢体障害) ・交通事故で障害者になった。遺失利益は現在の男女の就業、賃金から割り出されるので、同じ障害で同じ状況であっても、男性よりもかなり低い賠償額になってしまった。(20歳代 肢体障害) ・主治医に、「女性で良かったね。障害者になっても家族や配偶者に養ってもらえる」と言われた。女は働かない、家族が面倒を見るという考えは許せない。(20歳代 精神障害) 3 性的被害・暴力・虐待に対して ・複合差別実態調査の回答の中で一番多かったのが、性的被害に関する記述で、回答者の35%が経験していました。 ・職場で上司から、学校で教師や職員から、福祉施設や医療の場で職員から、介助者から、家庭内で親族からの被害が起きています。密室性と上下の力関係があるなかで、被害を受けながらも声に出せていない人が多数います。 ・DVの相談窓口や、公的シェルターを、障害のある女性が使えるようにするために、情報面や物理面のバリアを除去すること、通訳や介助などの合理的配慮を提供することを求めています。 ・また、関係機関や相談窓口の職員等の研修カリキュラムに、障害のある女性の複合差別に関する内容を含めることが必要です。 声 ・母の恋人から性的虐待を受けた。母の恋人が、私のお風呂介護をして胸等を触られ、非常に苦しい思いをした。母にそのことを言うが、信じてもらえず最悪だった。(30歳代 肢体障害) ・小学校のとき痴漢にあった。助けを求めるにもコミュニケーションがいる。聴覚障害のため助けを呼べなかった。中学生のとき同じ犯人から再び被害にあった。(20歳代 聴覚障害) ・やっと就職できた職場の上司に「飲みに付き合え」と言われ、酔って眠ってしまい、ホテルに連れ込まれて性的暴行を受けた。その後も関係を強要され続けた。(30歳代 肢体障害) 4  あらゆるサービスへのアクセス ・障害のない女性がアクセスできているすべての医療や保健サービスに、障害女性を想定した対応を行う必要があります。 ・障害のある女性が子どもを産み育てるという事が認識されていません。中絶を強要されることも起きています。(次頁も参照) ・障害のある女性の多くが、家族内や施設や病院で男性によるトイレや入浴の介助を余儀なくされています。性的被害のリスクとも隣り合わせの状況です。私たちは同性介助の標準化を求めています。 ・障害児は家族とりわけ女性の介護負担になるというとらえかたがあります。わたしたちは、障害のある女性を含む、全ての女性、全ての命が尊重される社会にしていけるよう、家族に限らない介助、および、あらゆる社会サービスを充実させることを望んでいます。 声 ・国立病院に入院中、女性の風呂とトイレの介助、生理パッドの取り替えを男性が行っていた。女性患者は皆いやがって同性介助を求めたが、体力的に女性では無理だといわれた。カーテンも開けたままで、廊下から見えた。 (50歳代 筋ジストロフィー 肢体障害) ・家事ヘルパーの時間を減らされた。料理などの手助けがもっと欲しいが、ヘルパーさんから「女なんだから、あなたがしなさい」と言われる。   (50歳代 知的障害) ・自分の生活にも不足な介助を受けての子育てに不安があった。子どもへの介助があれば、子どもをもてたかも知れない。(40歳代 肢体障害) 5 性と生殖に関する健康と権利 ・複合差別実態調査には、旧優生保護法のもとで、優生手術(不妊手術)を強制された人からの回答も寄せられました。 ・自由権規約委員会からも、旧法下で手術を受けた人の調査、謝罪、補償をという1998年の勧告を実施するようにと、2014年にも重ねて勧告が出されています。 ・優生手術をされた女性(1963年、16歳当時)が、2015年6月に日弁連に人権救済申立をしました。「知的障害だからと何の説明もなく優生手術を受けさせられ、生理時の激痛やだるさなど不調が出た。うやむやのまま闇に葬られては困る。国に謝ってほしい」 声 ・以前は母や周りから「早く結婚して子を産め」と言われたが、障害をもってから言われなくなった。そして、妊娠した時、障害児を産むのではないか?子どもを育てられるのか?といった理由で、医者と母親から堕胎を勧められた。(40歳代 視覚障害 1型糖尿病) ・子宮筋腫がわかったとき、ドクターは子宮を取れば治ると言った。私が「赤ちゃんが産みたい」というと「えっ!!」と驚かれ、それを聞いて私は大泣きした。女である自分を否定された気がした。(40歳代 肢体障害) ・女性だったら自分の体を知るべき、でも誰も教えてくれない。学校も教えてくれない。見直ししてほしい。正しい情報を流してほしい。 (30歳代 知的障害) 私たちはこのような勧告を求めています。 (2016年2月 第63会期 女性差別撤廃委員会審査にて) パラ16 健康−強制不妊手術 自由権規約委員会からの勧告を受けて、旧優生保護法に基づく被害について速やかに人権侵害を認め、特別委員会を設けて調査し、謝罪と補償を実施すること パラ20  1)本条約に挙げられたすべての権利へのアクセスに関する最新情報 本条約に挙げられた全ての権利へのアクセスのために、法律(各基本法および障害者差別解消法、障害者虐待防止法等)に障害女性の複合差別の課題に取り組むことを明記し、重点課題と位置付けて計画策定し実施すること 特に取組が遅れている雇用をはじめ、教育、健康、暴力などすべての領域について、障害のある女性の現状を正確に把握するために、障害者に関する統計は、男女別の実態把握ができるデータ、ジェンダー統計を整備すること 障害のある女性が合理的配慮のもとで働くことができる環境を整えること 障害女性の意見を施策に反映させるため、障害者にかかわる委員会や審議会は過半数を障害者関係者とした上で、障害者の少なくとも3割は女性とすること 入所施設等において同性介助を標準化すること・虐待や暴力にかかわる相談窓口の職員や従業員をはじめとして、教育、雇用、医療、保健などのサービスにあたる職員や従業員の研修カリキュラムに、障害女性の複合差別について入れること 適切な性教育を提供すること、障害がある人が使いやすい避妊方法や内診台などの開発、設備環境のバリアフリー化など、必要な措置をとること 2)障害のある女性への性暴力 障害のある女性に対する性暴力について実態把握を行うこと 相談窓口は、障害のある女性がさまざまな方法で相談できるものにすること 障害がある女性が性教育や性暴力防止のための教育等を受ける機会をつくること 福祉施設職員や学校の教職員等が、障害女性の性被害を含む複合差別について知り、その防止に向けて取り組むための研修を受ける機会をつくること 3)障害のある女性の虐待防止シェルター 障害のある女性のDV被害について基礎データを整備すること DVの公的シェルターを障害のある女性が使えるようにするための施設のバリア除去や介助、通訳などの適切な人的支援をおこなうこと、そのために必要な制度を整えること 写真:(印刷したリーフレットには写真キャプションはつけていません) 複合差別調査結果の報告集会 抗議行動(産科医療補償制度の見切り発足)厚生労働省前で