調査報告書を読んで   外国人女性の複合差別に取り組んできて カラカサン〜移住女性のためのエンパワメントセンター 山岸 素子  昨年、ちょうど、この複合差別実態調査に取り組んでおられるまっただ中のDPI 女性障害者ネッ トワークのメンバーの方々の会議に参加させていただく機会があった。私たちカラカサンの、フィ リピン女性たちによるフェミニスト参加型アクションリサーチの経験を、共有するためだった。 この時に、私や一緒に参加したフィリピン女性のスタッフが、メンバーの皆さんとの間に感じた、 何とも言いがたい共感と連帯の感情が、今回、報告書を読んだ私の心の中に再度よみがえり、胸 が熱くなった。  そのときに会ったメンバーとの会話のやりとりで感じたこと、そしてこの報告書の中にある、 障害をもつ多くの女性たちの訴えから感じたこと。それは、日本に移住してきた外国人女性も障 害のある日本人女性も、女性であることと外国人や障害をもっていることという複合的な差別の 中で、日々、もがき苦しんでいるという重い現実…。外国人女性と障害をもつ女性の経験に、ど れだけ多くの共通点が見いだせることか。たとえば、性被害やDV などの暴力の被害に遭いやす いこと、就労や経済的な自立に多くの困難がともなうこと、家族・社会のなかでいつも差別や偏見、 無理解にさらされていること…等々。  その一方で、私が会ったDPI 女性障害者ネットワークのメンバーやこの報告書の中の女性たち は、大きな「希望」を、外国人女性や私に与えてくれた。外国人女性と障害をもつ女性との間に 感じた、もう一つの共通点。それは、時には無力感にうちひしがれながらも、集まって分かちあ う過程の中で、「私たちの尊厳をふみにじらないで!人間として大切にして!」という声をあげ、 希望をけっして失わないで訴え続けていこうとする彼女たちの、生に対する肯定的な姿勢である。  今後、外国人女性と障害をもつ女性との間の相互の交流が進み、お互いのエンパワメントの関 係が構築されていくことを、心から願ってやまない。